ご家庭で既に太陽光発電システムを導入し、既にFITの買取り期間が終了(以下、「卒FIT」)した方にこそ見ていただきたく、また、「せっかく導入した太陽光発電システムならば、とことん賢く使い切ることに注力していきましょう。」という、ポジティブシンキングな内容にしたいと思っています。

(卒FITでは、電気代削減に目を向けよう)

 太陽光発電システムを導入したご家庭のお楽しみとして、毎月送られてくる売電額の明細の確認があると思います。一方で、電気代の請求金額の方は「システムを導入してからは、電気代、随分減ったなぁ。」とは思いつつも、システム導入のローン支払いもあることなどから、売電額のそれよりも関心が低くなっているのが現実ではないでしょうか?

 しかし、売電単価が著しく安くなってしまった卒FITにおいては、電気代の削減に注力することが求められます。

 そのためには、太陽光発電発電システムとご家庭で使用している電気機器の特性、電力会社との電力契約の内容、さらにはご家族の将来まで見込んだ構成、等々について、今一度、理解・整理をして、上手に電気代の削減に結びつけていくことがとても大切になってきます。

 卒FITのご家庭には、次の2種類の電気があるといえます。

  ① 電力会社から購入する『高い単価※1』の電気

  ② 太陽光で発電した家で使えば『タダ』の電気、『売っても安い単価※1』の電気

   ※1-- 電力会社の太陽光発電の買取単価(例:九州電力7円/kwh)との比較

 これからも分かるとおり、FIT期間中であれば、最大、1kwh当り48円(税込)で売電できたものが、卒FITで著しく低い単価の下では著しく収益が低くなることが分かります。さらに、売電に注力し過ぎてしまうと、太陽光の発電でまかなえたはずの電気が足りなくなってしまい、①の電力会社から高い単価で補わなければならなくなってしまいます。

 以上のことから、

 ご家庭で使う電気は、②である『タダ』で『売っても安い単価』の電気を最初になるべく使い切り、それでも足りない分は、①である電力会社から購入する『高い単価』の電気で補っていくことが適切であることが分かります。

 太陽光発電施設を導入した際のローンの返済については、電気代の削減分で支払っていく。という考え方に頭を切り替えることが重要です。

 (発電した電気を上手に使う方法)

 しかしながら、太陽光発電で発電された電気は日中にしかないので、毎日の生活の中で使う電気をこの時間帯で使っていくことを考えていく必要が出てきます。

 とはいえ、ご家族全員が一日中、家で過ごしている方であれば、「夜型生活から昼型生活に変えて夜は極力電気は使わないようにしましょう。」ということで大方は説明しきれるのでしょうが、日中は仕事や学校で不在であり、家での活動は朝と夕方以降が中心であるようなご家庭についてはどのような方法があるのでしょうか。以下、いくつか提案させていただきます。

電気温水器で日中にお湯を沸かす。電気温水器を設置して日中に必要なお湯を沸かておくことが現状での一番のオススメとなると思います。お湯は、毎日必ず一定量が必要なものですから、タダの電気を熱にして貯めておくことは有効な方法と言えます。(電気温水器の中でもエコキュートと呼ばれるものが効率が高いとされています。貯湯タンクに隣接してエアコンの室外機と同じものが設置されているものがエコキュートになります。)

[裏技]電気温水器の中には、深夜でしかお湯を沸かせないタイプもあるようです。このタイプの温水器に対しては、温水器の現在の時刻を12時間程ずらしてやれば、昼と夜とが逆転して昼にお湯を沸かせるようになると思います。これを行う場合、不用なトラブルを防ぐために取扱説明書をよく読んでから行うようにしてください。

エアコンの利用を早める。夜に帰宅してからエアコンをフル稼働させるのであれば、昼(午後3時ぐらい?)の時間帯からエアコンを入れておいて部屋をあらかじめ適切な温度にしておけば、夜の時間帯での電気使用料が少なくなるのではないでしょうか。こちらについては、家の造り等によって大きく効果は違ってくるものと思いますが、実際に試してみると思わぬ効果が発揮できるのではないかと思います。

[注意]電気温水器を導入済のご家庭のほとんどが、電力会社との契約を『深夜に電気が安くなる(すなわち、日中の電気が割高)タイプ』にしていることが考えられます。これまで述べた対策を行う場合は天気が悪い日のことも考えて『日中でも割高にならない(どの時間帯も同じ単価)契約』に変更することを検討してください。(※ただし、一度契約変更をしたら、元の契約に戻すことができない場合もありますので注意が必要です。)

(蓄電池の導入は?)

 確かに、蓄電池を導入すれば電力会社からの電気代は大きく削減できます。しかし残念ながら、蓄電池自体は未だ高く、また、繰り返し使える回数も気になるところです。よってこれらを含めて考えたとき、発電した時点ではタダであった電気が、蓄電池を通して使うと実質的に電力会社から買うより高くなってしまっては意味がありません。ただ、蓄電池は電気代の削減だけのものではなく、夜間の停電時に特別な操作なしで電気が確保できるという機能も持ち合わせています。ですので、蓄電池の導入については、電気代の実質的な削減とともに、このような機能の必要性等も考慮しつつ検討すれば良いのではないでしょうか。

 導入済のご家庭であれば、せっかく導入した蓄電池なのだから、楽しみながら、とことん賢く使い切っていくこと目指していきましょう。

 (提案事例)

 ある、卒FITのご家庭の電気代削減に向けて提案させてもらった例を紹介します。

[例1] ◎家族 2人暮らし、日中は1人、夜は早い時間に就寝

     ・太陽光発電施設 10kwシステム

     ・エコキュート 導入済み、深夜に湯沸かしをしている(湯沸かし開始時間変更) 

     ・電力契約 季時別電灯契約(夜に安く他時間は割高、夏は割高)

    

 ご提案 ・エコキュートの湯沸かし開始時間を深夜から『午後1時』に設定変更

     ・電力契約を終日、同じ電気単価の『従量電灯B』に変更

 

[例2] ◎家族 2人暮らし、日中も2人、就寝は深夜

     ・太陽光発電施設 10kwシステム

     ・エコキュート 導入済み、深夜に湯沸かしをしている(湯沸かし開始時間設定不可) 

     ・蓄電池導入 10kwh

     ・オール電化 導入済み

     ・電力契約 季時別電灯契約(夜に安く他時間は割高、夏は割高)

 ご提案 ・蓄電池を「グリーンモード」に設定

      (オムロン製の設定モード。蓄電池への蓄電は太陽光発電によって得られた電気を優先的に行う)

     ・エコキュートの現在時刻を12時間ずらし昼と夜とを逆転させ、昼に湯を沸かす。 

      (例えば、朝の10時に、エコキュートの時刻を夜10時と入力)

     ※電力契約の変更は、現在時点では未実施

      (季時別電灯契約は一度解約すると再度契約することができないことから、慎重な対応が必要となる。)