分かる!前にズル! 読み終えればFIP移行のしくみが分かってくる
まずは、低圧FIT事業者は、今後、どのようなルートを歩んで行けるのかを整理してみました。

FIT開始から20年の間に進んで行けるルートは、図のとおり、このままFITを継続、FIP移行する、発電所を売却する、の3つのルートになります。
20年が経過した後は、FIT及びFIP移行(FIT期間と合計して20年)は終了します。
事業者は、交付金の支援がまったく無い中で、電力市場取引等で電気を売却する(3つの手法)か、発電所を売却する、発電所を解体する、の5つのルートを選択することとなります。
今回は、このうち、FIP転に絞って整理していきます。
2-1 =だからFIP移行= 低圧FIT発電事業者への問いかけ
国の再エネについて検討する部会では、低圧FIT事業者に対して次の様な議論がされています。
実際に、このような考え方をもとに政策が進められているようです。
= 低圧FIT事業者に求められていること =
FIT(FIP)終了後も長期安定的に事業が継続されること
- 社会的コスト逓減のため、電力市場での取引だけで自立運営すること
- 発電所の健全性(土木・構造、権原、法令手続、(地域共生))が保たれていること
- 適切なメンテナンス が行われていること
- 発電所の効率化・高度化を図っていくこと
⇒ なぜなら、国民負担による支援を受けた設備であるから
しかしながら、
低圧FIT事業者には、その能力(知識、ノウハウ、財力)を持ち合わせているか?

(低圧FIT事業者は)、第一段階として、従来のFIT制度を活用した運営から市場取引と交付金とをミックスしたFIP制度に移行し、市場取引の知識・ノウハウを習得する。さらには、市場取引だけを基本とする自立運営への最終形へと移行する。
これに対応できない事業者は、事業からの撤退、残った施設は集約化を図っていくことが必要ではないか。

2-2 FIP移行を知る
1) どうやって収益を得るのか
FITでは、九州電力(送配電)からの売り上げ(正確には交付金)で収益を上げていました。
FIP移行では、 電力取引市場による(若しくは小売電気事業者等との相対取引)売上と、売電量に応じて別に支払われるプレミアム交付金(※) との合計額、言い換えると、FIP移行単価(市場価格+プレミアム単価)に市場での売電量を乗じたもの、で収益を上げていくことになります。
※ プレミアム交付金は、遅れて、事業者に直接交付される。

2) 市場価格とは
市場価格とは、目的に応じていくつかある電力市場のうち、卸電力取引(スポット)市場等で実際に取引したときの売却単価のことです。
| 市 場 名 | 役 割 | FIP移行単価との関係 |
|---|---|---|
| 卸電力取引市場 | 日々の電気の売買 | ・ FIP移行で売却可能な市場 ・ プレミアム単価の積算に使用 |
| 容量市場 | 数年先の供給力の確保 | |
| 需給調整市場 | 瞬時の電力調整(周波数維持等) | ・ FIP移行で売却可能な市場 |
| 先物市場 | 価格変動の危険分散 | |
| 非化石価値取引市場 | 非化石価値証書の取引 | ・ プレミアム単価『他』での(-)を、この市場等で(+)にできる |
3) プレミアム単価とは(中身を細分化すると見えてくる)
プレミアム単価は「FIT単価」「前年及び前年・今年の当該月における平均市場価格(※)」「他」を使い算出されます。
※「平均市場価格」-- 卸電力取引市場で24時間、30分毎に決定した価格等をもとに算出される

- FIP移行では、FIT単価をそのまま、プレミアム単価(の一部)に引き継ぐことができる
- 出力制御が行われた日は、プレミアム単価が加算調整されることがある
- 「他」は、非化石価値を(-)、バランシングコストを(+)からなる
Motto 深掘り
- プレミアム単価の加算: 調整後プレミアム単価といい、電力市場が0.01円/kwhのとき、その時間帯のプレミアム単価をその日の別の時間帯に移行し加算するもの。
- 非化石価値: 太陽光発電による電気にはCO2を排出しないという環境的な価値があるとし、この価値を売買できるように証券化したもの。FITでもこれはあったが、FIP移行ではこの所有が発電事業者に移る。これを売却することで事業者は利益を得られるとの前提で、プレミアム単価ではその分が(-)される。
- バランシングコスト: 実際の市場取引では、事前に提出した発電計画どおりに対応できなかった場合、ペナルティー金を支払わなければならないが、プレミアム単価では、これが一定程度発生するものとして、(+)措置される。
4) FIP移行単価(グラフ化で分かりやすくする)
グラフ化
FIP移行単価がイメージしやすくなるよう、’26年3月の計算例をグラフ化して見ました。
ここでは、FIP移行単価に関係する、ほかの項目(右、グレー網かけ部分)についても合わせて載せて説明します。

グラフの各項目の相殺的関係
グラフの各項目は相殺的な関係にあります。
- 非化石価値: プレミアム単価で(-)、他市場等取引で(+) ⇒(+-, 0)
- バランシングコスト: プレミアム単価で(+)、市場売買のペナルティーで(-) ⇒(+-, 0)
- ’25年3月と’26年3月の月平均単価: 前年と今年とで変わりなければ ⇒(+-, 0)
これらを相殺することで、『FIT単価』と『’25年の年平均価格』だけとなりました。
さらに、これらを足し引きすると、最終的にFIT単価の一部だけが残ります。これを『残ったFIT単価』とします。


「残ったFIT単価」はプレミアム単価です。
よって、「FIP移行単価」は「残ったFIT単価」と「市場価格」を合計したものとなります。
※ 以下、原則、この考え方をFIP移行単価と見なします。
FIP移行単価は、市場価格に合わせて30分毎に変っていきますが、全体を通して「もとのFIT単価」よりも高ければ、FIP移行をした方が良いという判断材料の一つになります。
5) FIP移行単価とFIT単価を比較してみる
常に変化する「FIP移行単価」と「もとのFIT単価」との関係を見てみます。
自社の「もとのFIT単価」が異なる(制御ルールも違う)2つの発電所を例にします。
竹田発電所: FIT単価:40円(旧ルール)
- 「残ったFIT単価」-- 31円 (40-9 ( '25年平均価格等))に設定
- 「市場(スポット)価格」-- グレー線
- 「FIP移行単価」-- 赤線(黄線、青点線)
- 「調整後プレミアム単価」-- 午後4時以降、5円に設定 (青線)




佐伯発電所: FIT単価:12円(無制限ルール)
- 「残ったFIT単価」-- 3円 (12-9 (〃))に設定
- 「市場(スポット)価格」-- グレー線
- 「FIP移行単価」-- 赤線(黄線、青点線)
- 「調整後プレミアム単価」-- 午後4時以降、1円に設定 (青線)




※ FIP移行で出制御が当面なくなる予定(紫の網かけ部分)
見えてきたこと
- いずれも、日中の発電時間帯では、ほぼ、「もとのFIT単価」以下となった
- 特に、春は市場価格が0.01円の時間帯(青点線)が発生したので、プレミアム単価(=「残ったFIT価格」)はなくなり、市場価格だけの0.01円となる [ 2-2.3)参照 ]
- (青点線)分が「調整後プレミアム単価(青線)」に移行加算されたが、そもそも、その時間帯は発電量が少ない
- 夕方から朝までは「もとのFIT単価」より高い。その額は40円の方が大きいが、アップ率では12円の方が遥かに大きい
- 出力制御(紫)だった部分の制御がなくなり、より多く売ることができる。 ※ 旧ルールでも原則30日の出力制御あるのでこの恩恵を受ける
あれっ、FIP移行で大丈夫?
これまでの整理の結果では、FIP移行のメリット(FITより収益増が見込める)は、ほとんど見つけることができませんでした。唯一と言えば、出力制御だった部分(紫)が売れるようになることぐらいです。
そこで、改めてこれまでの整理をもとに『FITでは出来なかったがFIP移行すればそれが出来るようになって、かつ、それが収益増に繋がるものはないか。』について整理しました。
FIP移行で収益増に繋がる取組み
- 取引価格の高い最適な電力市場で取引する
- FIP移行単価が高い時間帯に売る
- より多く売る(制御がなくなるとは別に)
これを見てみると、これまでは「③多く売る」の分しか比較していないことが分かります。
さらに、収益アップを目指せる取組みを調べれば、FIP移行のメリットが見つけられるかもしれません。

次回も、引き続き、FIP移行について整理していきます。
[ 出力制御 ] FIP移行で(当面)制御がなくなるとは?
’27年度当初から、出力制御等を行う順番のグループが細分化され、太陽光等のグループは、制御が少ない『FIP移行等グループ』と、より多く制御を受け持つ『FITグループ』とに分かれることになりました。
これは、本来、FIP移行等のグループに対して行われる制御をFITグループが代わりに受け持つ形で行われることから、FIP移行等グループは当面、制御がなくなるのではないかとされています。
これは、FIP比率が25パーセントになるまで行われる予定となっています。

これまでは、FIP移行を行うことでFIT時よりも収益を増加させることに注目していましたが、この’27年度以降の出力制御のルールの見直しで、FITのままだと、急激に収益が減少していくかもしれません。
FITのままだと、このようになる?


